スウッシュ型の緩やかな景気回復を背景に株式やハイ・イールド債に妙味=HSBC投信の投資環境見通し

 HSBC投信は6月24日、販売会社やメディアを対象としたオンライン・セミナー「2020年後半の世界経済と金融市場の見通し~加速する経済社会の新トレンド~」を開催した。香港拠点に在籍するHSBCグローバル・アセット・マネジメントのアジア・太平洋地域CIO兼株式部門グローバルCIOのビル・マルドナド氏がテレビ会議システムを使って、当面の市場環境についての同社の描くシナリオを語った。同社が想定するのは、ナイキ社(NIKE)のロゴマークである「Swoosh(スウッシュ)」型の緩やかな景気回復。不確実性は残るものの、「日本を含むアジアの先進地域(中国、韓国、台湾、シンガポール)の株式や社債に魅力的な投資資産が存在する」と語っていた。

マルドナド氏は、現状について、「3月以降に世界の政府や中央銀行が『できることは全て行う』と大規模、かつ、迅速な経済対策を実施したことによって、株価急落などのテールリスクは後退した。新型コロナウイルス感染の第2波や地政学的な対立など懸念材料があって、第2次世界大戦以来といえるほど不確実性が高い。先進国の国債利回りがほとんどマイナスになるほど国債が割高であり、債券と株式の相関も高いため、大きなリバランスが起こる可能性がある。ただ、経済はスウッシュ型に緩やかに回復し、株価の回復は続くだろう」と見通している。

そして、世界の株式市場の中でアメリカの株式市場が最も良いパフォーマンスになっていることについて、「アメリカが他の国より良い状態にあるということではなく、セクター効果によって、ITセクターの比率が相対的に高いアメリカ株式市場の回復がより力強くみえているだけのこと」とした。各市場の業種の偏りを補正したセクターニュートラルで株価の推移を振り返ると、突出して良く見えるアメリカの株価も他国の株価推移と同じような水準になる。このため、「回復期の株価の戻りとしては、慎重なラリーになっている。多くの投資家は様子見の段階であり、これまでの上昇をバブルとか過熱しているという見方はあてはまらない」と解説した。「企業業績は、今年はマイナスになり、21年に大幅な増益に転じると考える。足元の業績が厳しくとも、3年以内に急速に回復することが見込まれるのであれば、株式市場にとってはポジティブだ」という。

また、これからの投資環境を考える上で、「先進国の国債が、ほとんどマイナスの利回りとなり、これまで国債に期待されてきたショックアブソーバー(振動を減衰する装置)の役割が果たせなくなっている。従来のアロケーションの考えを修正する必要がある。不確実な時代とは言え、株式やハイ・イールド債などリスクの高い資産に資金をシフトする必要がある。従来型のリスク管理の考え方では、国債の保有を外してハイ・イールド債を増やす方が良いといわれて気持ち悪いかもしれないが、現在の市場環境を考えると、その方が合理的だ。特に、現在は各国政府が雇用を重視しているため、簡単には企業を破綻させない政策をとっている。ハイ・イールド債にとってはポジティブな環境だ」と語っていた。

その上で、魅力的な投資先として、「株式ではアジアは割安な水準にある。金融危機(リーマンショック)やサーズ(SARS)問題の時くらいに割安になっている」と中国をはじめアジアの先進国の株式に投資チャンスがあるとした。そして、「ESG型の戦略は、今回のショックで痛手が小さかったが、それは、エネルギー関連やCO2の排出が多い企業群をポートフォリオから外していた結果、原油価格の急落等によって大きくパフォーマンスが悪化したエネルギー株への投資比率が低かったことが好成績につながった。また、FAANG(フェイスブック、アップル、アマゾン、ネットフリックス、グーグル)等の株価が好調だが、コロナ禍でIT関連サービスの採用が増えていることが背景にある。このように、コロナ禍は社会構造の変革を促進させた側面があり、ESGやハイテク株の優位は、当面のトレンドとして継続するだろう」とした。

一方、当面のリスクについては、感染拡大の第2波などコロナ問題の再燃や長期化、また、地政学問題や米大統領選など不確実な要素が様々にある。「慎重な態度を堅持することは重要」とした。たとえば、世界各国は一斉に大規模な財政・金融政策を実施したが、世界経済の回復の度合いが高まってきた時には、緩めた金融を引き締めるなどの対応を迅速に実施しないと、想定を超えるインフレを引き起こして経済的な混乱に陥る可能性もあると注意を促していた。(図版は、HSBCグローバル・アセット・マネジメントが当面のメインシナリオとして想定するSwoosh型の景気回復のイメージ図)