国内公募投信のパフォーマンスを抜本的に向上するための方法、金融庁が運用業高度化レポートを発表

 金融庁は6月19日、「資産運用業高度化プログレスレポート2020」を公表し、内外の運用会社のヒアリングの結果を踏まえ運用会社の運用力強化のための指針についてまとめた。関係機関をはじめ、広く一般からレポートに対する意見を求め、運用会社や運用商品に対する行政の指針を固める考えだ。レポートから読み取れるのは、「日本の投信の利用が進まないのは、日本の運用会社が巨大な販売力を持った販社の系列にあり、公平な競争が行われていないためだ。系列の大手運用会社はガバナンスの高度化を進めることが必要だ。独立系、および、外資系の参入を促して、より良い運用商品が市場に入ってきやすい環境を整える」という内容だ。国内の運用会社は、このレポートをどのように受け止めるだろうか?

レポートが指摘したのは、国内公募投信のアクティブファンドのパフォーマンスの悪さだ。国内公募投信全体の純資産残高は、パッシブ6.64兆円に対しアクティブは55.53兆円と、圧倒的にアクティブのシェアが高い。投信全体のパフォーマンスの印象はアクティブファンドの優劣を反映しやすいといえるが、5年シャープレシオ平均がパッシブ0.40に対しアクティブ0.20。5年累積リターン平均は、パッシブ22.60%に対しアクティブは9.70%と、アクティブの成績が目に見えて悪い。これは、米国のミューチュアルファンド(投信)のパフォーマンスが、5年シャープレシオ平均でパッシブ0.71に対しアクティブ0.67。5年累積リターン平均がパッシブ53.13%に対しアクティブが40.63%という実績と比較しても、日本の公募アクティブ投信のパフォーマンスの悪さが目立つ。

米国においては、「アクティブのパフォーマンスはパッシブに勝てない」という実績によって、伝統的なアクティブ運用から資産が流出し、パッシブファンドやETFに大幅に資金が流入している。この結果、米国のミューチュアルファンドの残高では、アクティブファンドの残高とパッシブファンド(ETF含む)の残高が変わらない規模になってきている。そして、パッシブファンドではファンド規模が大きくなるとともに運用報酬の引下げが行われ、この流れでアクティブファンドの運用報酬も低下。結果的に経営が苦しくなった運用会社の大規模合併が繰り返されている。近年の合併は、18年10月のインベスコ(純資産残高9370億ドル)とオッペンハイマー(同2460億ドル)、20年2月のフランクリン・リソーシズ(同6490億ドル)とレッグメイソン(同7270億ドル)という、合併によって1兆ドル(107兆円)を超える資産規模の運用会社が生まれている。

このような米国における変化と比較すると、日本の変化は穏やかに見える。日本においても、パッシブ運用への資金流入は続いているが、米国ほど極端ではない。また、運用会社の合従連衡は続いているが、基本的にはグループ内運用会社の統合であり、誕生した新会社の運用資産残高も50~70兆円の水準だ。米国で「残高が1兆ドル以下では生き残れない」という追い詰められたような合併が繰り広げられていることとは異なる。

このような国内の運用会社の抱える課題の原因の1つとしてレポートは、「国内大手資産運用会社は、販売会社の子会社として設立されたものが多く、グループ親会社や販売会社からの独立性が不十分である」との見方を紹介している。「運用会社に対する販売会社優位の構造ができあがり、顧客に中長期的に良好な運用成果が十分に提供されていないのではないか」と追及している。この販社優位の一つの表れとして例示されたのが、「専用ファンド(1社独占販売)」の弊害。親会社の販売を優位にするために、1社限定のファンドを数多く設定し、その結果としてファンドの規模が十分に大きくならず、ファンドの運用コストが運用成績を圧迫しているのではないかと指摘している。

ただ、一部の金融グループにおいては、運用会社の独立性を強化し、長期の視点で経営に取り組んでいると事例を紹介。三井住友フィナンシャルグループの三井住友DSアセットマネジメントが、グループ外から代表取締役社長兼CEOを招聘したこと(現在の社長兼CEOである猿田隆氏は野村アセットマネジメント出身)。また、三菱UFJフィナンシャルグループは、三菱UFJ国際投信などの運用関連子会社を三菱UFJ信託銀行の完全子会社として、三菱UFJ信託銀行の独立性を重視。そして、日本生命グループでは生命保険会社として蓄積された運用ノウハウ等をニッセイアセットマネジメントで活用し、グループ一体で資産運用ビジネスを強化――などを取り上げている。さらに、日興アセットマネジメントが取締役10名のうち7名を独立社外取締役とし、その社外取締役のうち4名は長年運用ビジネスに従事している人材を選任していることも好事例にあげている。

レポートが示している「対応の方向性」は、(1)顧客利益を最優先するガバナンスの確立と機能発揮、(2)資産運用ビジネスに知見のある経営陣による顧客利益最優先・長期視点での運用を重視した経営を行うための経営体制、(3)目指す姿・強みの明確化と、その実現に向けた具体的な取り組みの推進、(4)役職員の評価・報酬体系や商品組成、ファンドの運営管理等に係る業務運営体制の構築・改善――としている。金融庁が目指すところは、「運用力の強化」「商品数をむやみに増やすことなく、中長期的に良好で持続可能な運用成果を挙げられる商品に注力」「不採算ファンドや中長期にパフォーマンスが悪化しているような少額投信について積極的に償還・併合を進めるなどファンド管理の徹底」などといった姿だ。

金融庁では、このレポートに対する意見を7月20日まで、電子メールで受け付ける。このレポートの指摘は、正しく我が国の運用会社の状況を映しているといえるのだろうか。あるいは、より良い運用商品の誕生と成長を促すために、運用業界に何が必要であるのか。これらの議論を通じて、より良い運用環境が整えられることを期待したい。(図版は、「資産運用業高度化プログレスレポート2020」が取り上げた国内公募投信のパフォーマンス比較)