「世界インパクト投資ファンド」、SDGsとイノベーションでコロナ後の社会変革を促す革新的企業に投資

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、世界の主要都市がロックダウン(都市封鎖)に追い込まれ、これからの社会を大きく変えるインパクトがあった。この社会的な変化を捉えて、新しい時代を切り拓く企業群に投資するファンドとして三井住友DSアセットマネジメントが設定・運用する「世界インパクト投資ファンド(愛称:Better World)」が注目を集めている。同ファンドが着目している社会の変化について、三井住友DSアセットマネジメント投信営業部の伊藤健人氏に聞いた。

――「Better World」は2016年8月の設定ですが、ファンドオブザイヤー2019で優秀ファンド賞を受賞するなど、近年、評価が高まっています。同ファンドの現在における評価をどのように考えていますか?

2015年に国連が採択した「持続可能な開発目標」(SDGs)は、2030年までに達成する17の目標と169のターゲットを社会的課題として明確にしました。「貧困をなくす」「飢餓をゼロに」など、SDGsを達成することで、年間最大12兆米ドル(約1280兆円)という中国のGDPに匹敵するほどの大きな市場が生まれると期待され、そこには大きなビジネスチャンスも生まれます。また、課題解決には長い年月を要することもあり、企業の取り組みも長期的な発展や成長の余地があります。この新たな市場創出に着目し、その関連企業の成長をファンドのパフォーマンスに取り込むのが「Better World」です。

イノベーション(技術革新)は、さまざまな社会的課題に対し、これまでにない視点から解決策を示すことができます。たとえば、近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)といわれ、進化したデジタル技術を社会の変革に活かそうという動きが注目されていますが、今回のコロナ禍ではビッグデータを解析して新宿や渋谷などの人出の変化を見える化してニュース番組などで外出を自粛する呼びかけに使われました。また、開発までに数年がかかってきたワクチンの開発にはAI(人工知能)を使うことで開発スピードが格段に上がっています。

コロナ禍は、社会の仕組みを大きく変えるきっかけになりました。この社会変革の時代で注目される企業を積極的に応援していくのがインパクト投資です。改めて今日的なテーマとして「Better World」への評価が高まっているのだと思います。

――インパクト投資とESG投資は何が違うのですか?

インパクト投資は、世界的な課題の解決に取り組み、社会(S)や地球環境(E)にインパクトを与える企業に投資することです。ESG投資の考え方のひとつですが、民間企業の力を活用して社会的課題を解決すると同時に経済的利益を追求するところに特徴があります。インパクト投資について、社会的な課題解決のために投資リターンを犠牲にするという誤解もありますが、積年の社会課題をイノベーションによってビジネス機会に変換できた企業への投資は、投資リターンを同時に獲得することが可能です。

インパクト投資が注目するのは、投資先企業の製品やサービスの成果(=社会問題の解決)です。世界のピンチを救うための新しいイノベーションを起こせる企業であるかどうかが評価の基準になります。たとえば、水の利用に気を付け水源の保護に力を入れ、従業員に優しい経営をしている酒造会社があるとします。この会社は、ESG投資の観点では投資対象に加えられますが、インパクト投資では投資対象になりません。酒は社会的な課題解決に役立つイノベーションではないからです。

――ファンドの具体的な銘柄選定のプロセスは?

ファンドでは、国連のSDGsが掲げる17のテーマの中から、11の投資テーマを選び、それを3つに区分して、3つの投資カテゴリー「衣食住の確保」「生活の質向上」「環境問題」にバランス良く投資します。11の投資テーマに関連する銘柄の株価パフォーマンスは相互に相関関係が低く、また、逆相関といった関係にあります。これらを組み合わせることによって、ポートフォリオとしてバランスの取れた、効率的な分散投資ができます。

具体的には、まず、11の投資テーマに関連する企業群のインパクト分析を行います。その際には、インパクト投資に関連する事業の売上高が全体の50%以上、他社にまねのできないイノベーティブな技術・サービスがあること、計測可能なKPI(重要業績指標)が設定できることが投資対象の基準になります。その上で、ファンダメンタル分析を行って経営に問題がある企業を除外し、収益期待やリスク分散等に配慮してポートフォリオを構築します。投資対象として新興国の課題解決にコミットして短期間で成果があげられるハイリスク・ハイリターン型の投資と、先進国で複雑に利害関係が絡まった社会問題を時間をかけて解決するようなローリスク・ローリターン型のインパクト投資を組み合わせてバランスを取ることも考慮しています。

さらに、インパクト投資の特徴は、ポートフォリオに組み入れた後で、KPIを計測し、期待通りの社会貢献効果があるかどうかをモニタリングしていきます。企業とのエンゲージメント(目的を持った対話)を通じてモニタリング結果を検証し、期待されたインパクトを社会にもたらさない企業はポートフォリオから外します。最終的には50~70銘柄で運用します。

――ファンドを実質的に運用するウエリントン・マネージメントのインパクト投資分野における強みは?

ウエリントン・マネージメントは1928年に設立された米国の運用会社で、100兆円以上の資産を運用しています。歴史のある大手運用会社として企業とのエンゲージメントもしっかりしています。

また、サステナブル投資を統括するウェンディ・クロムウェル氏が2018年に国連の責任投資原則のボードメンバーに就任しています。運用会社からボードメンバーに唯一選ばれており、それだけESG投資の分野でのウエリントン社の取り組みが高く評価されているといえます。同社のグローバル・インパクト投資は、ハーバード・ビジネス・スクールのMBAカリキュラムでケーススタディーとして取り上げられるほど、学術界でも注目されています。

――今年3月のコロナショックを受けたファンドのパフォーマンスは?

コロナショックでは小型株、新興国株が大きく値下がりしました。ポートフォリオに占める中小型株比率が50%超と比較的高くなっているため、コロナショックの下落の影響をファンドも受けました。ただ、足元は4月の基準価額の月間騰落率がプラス8.4%、5月がプラス4.6%と、市場全体の落ち着きに応じて価格を大きく戻しています。

コロナショックで、世界中の人々の生活様式が劇的に変わると予測されています。この「ポストコロナの新常識」にイノベーションで応えられる企業の評価はこれから本格化していくものと考えられます。

たとえば、在宅勤務の浸透により、都心ではなく地方のリーズナブルな住宅の需要が拡大すると予測されますが、当ファンドでは、ドイツ郊外都市で低価格帯住宅を提供しているLEGイモビリエンを保有しています。また、米国ではオンライン診療回数が10億回と、コロナ前の約30倍に拡大していますが、ニュアンス・コミュニケーションは、オンライン診療向けの音声自動認識AIを医療機関に提供し、電子カルテの更新作業を大幅に短縮したことで医療崩壊の危機から医療従事者を救ったと高く評価されています。また、オンライン教育事業の提供会社、テレワークを狙ったサイバー攻撃に備えるセキュリティ会社など、コロナショックへの対応で注目を集めた企業があります。新しい生活様式が世界の常識になっていく中で、このような企業の成長が期待されます。

――ファンドの受益者の方、また、ファンドに注目している投資家へのメッセージは?

インパクト投資は社会の抱える問題を技術革新によって解決していく企業群に投資する手法です。そのような革新的な技術を持つ企業群は、ブルーオーシャンといわれる新しい市場を開拓し、高い成長が期待できます。従来は社会的な問題の解決には、20年、30年という長い期間をかけて試行錯誤の上で解決策を見出していましたが、近年はビッグデータやAIを駆使することによって、10年やそれ以下の期間で問題解決の筋道を示すこともできるようになってきています。社会の変化は、思っている以上に早く進む可能性があります。

当ファンドは、より良い社会づくりに貢献する企業群を長期で応援するというコンセプトで運用しています。コロナショックによって社会の構造が一気に変わる可能性が高く、当ファンドが組み入れている企業群の成長は、今予想される時間軸よりも、より早く大きな成長を実現する可能性もあります。資産形成のために、中長期で投資するファンドとしてインパクト投資に着目した「Better World」をご検討ください。(図版は、2030年を目標期間としたSDGs達成によってもたらされる市場機会のイメージ)