シリーズ残高6700億円を突破した「eMAXIS」、人気が集中するシリーズの魅力を聞く

 三菱UFJ国際投信が設定・運用するネット専用のインデックスファンドシリーズ「eMAXIS」の残高拡大に拍車がかかっている。2009年10月の設定から、シリーズ残高が1,000億円の大台に乗せるまでは約5年間を要したものの、この5月11日にシリーズ6,000億円の大台に乗せるまで、1,000億円の積み増しに要した日程はわずか5カ月余りだった。低コストのインデックスファンドシリーズは各社から出ているが、「eMAXIS」シリーズは際立って高い成長を遂げている。同ファンドシリーズの成長の背景について、三菱UFJ国際投信のデジタル・マーケティング部シニアマネジャー野尻広明氏に聞いた。

――「eMAXIS」シリーズは19年12月23日にシリーズ総残高が5,000億円を突破し、この5月11日に6,000億円を突破しました。また、個別には「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が5月28日に残高1,000億円を突破し、「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」も6月2日に1,000億円の大台に到達しました。シリーズの1号ファンドを2009年10月28日に設定してから、10年余りが経過しましたが、残高の増加は近年スピード感を増してきています。この「eMAXIS」シリーズへの資金流入増の要因をどのように分析されていますか?

ネットでの取引が拡大し、ネット投資家層が拡大してきたことが一つあると思います。100円から可能な小口投資やポイント投資などその利便性は高まっており、また、つみたてNISAなど制度面での後押しもあり資産形成層を中心にネットで取引する投資家は増えてきたと感じています。

一般消費財においても同じだと思いますが、ネットで取引する場合に最も気にするポイントの一つはコストだと思います。投資信託におけるコストはいろいろありますが、代表的なものである信託報酬に関して、低廉な価格でインデックスファンドを幅広く提供したいと考え2009年に当シリーズを設定しました。

それ以降、色々な商品を揃えて参りましたが、時代と共に信託報酬は下がり、投資家もよりコストに関して敏感になってきたため、それに応えられるよう、低廉な信託報酬を目指し続けるSlimシリーズを2017年に投入しました。このように、時代に合わせた形で幅広い商品を低廉な価格で提供し続けていることのほか、お客さまに寄り添いながらロボアドのサービス開始やLINEを通じた情報提供などの多様なサービスを提供し続けてきた結果が、お客さまからのご支持へと繋がり、こういった一連の取り組みが成長のポイントの一つになっているのではないかと考えています。

――貴社の努力によって、市場を育ててきた効果も大きかったと思います。貴社が行ってきた代表的な市場振興策をご紹介ください。

投資初心者の方々も増えていった中で、「自分にあった商品がわからない」という悩みを解決し、ファンド選びの一助となるようロボアドのPORTSTARと5つのバランスファンドで構成される「最適化バランス」シリーズを2016年3月にリリースしました。こちらは、多くの販売会社に導入及び採用頂け、少しずつではあるものの残高も着実(6月5日時点シリーズ合計約136億円)に増加しております。PORTSTARについては、合計110万PVを超えてきており多くの方にご活用頂いております。

また、これまで運用会社は投資家の皆さまと対話を行う機会が限られていたことから、直接、皆さまの要望や疑問に答えていきたいということで、ブロガーミーティングを定期的に開催しております。ここで頂いた意見などは社内にも還元し、たとえばファンドのベンチマークを配当込み指数に変更するなど、要望を受けて対応したものもあります。投資家の皆さまが何に疑問や不安等を感じているか直接的に聴ける場は今後も大切にしていきたいと考えています。

また、これが直接的に関係してくるものではないですが、昨年の「投信ブロガーが選ぶ!FOY2019」では弊社商品がTOP3を独占したことを始め20ファンドのうち7ファンドが受賞する等、投信ブロガーの方からご支持いただけたことは嬉しかったです。

――ネット専用のインデックスファンドは、手数料の低さが大きな魅力ですが、品質を維持しつつコストを下げるという命題に、どのようにして応えてきたのでしょう?

信託報酬の引下げのために運用の品質を犠牲にすることはありません。本シリーズに関しては、極力ペーパーレス化を推進し印刷物を配布しないなどのお客さまにマイナスの影響が及ばない範囲でコスト削減を行っております。また、信託報酬以外にも最良執行による取引コストの低減など運用コスト全体の削減の取り組みも積極的に行っています。

こうした信託報酬だけではなく運用コスト全体の削減が、運用品質の向上につながると考えています。運用品質の向上への取り組みとしては、その他にも貸株などによりコストを埋め合わせていくことにも一部対応することで、パフォーマンスの向上に努めています。

また、商品性の観点でも、本シリーズでは、スケールメリットを生かして運用コストを引き下げる受益者還元型スキームを導入しています。これは一定水準以上の残高に係る信託報酬を段階的に引き下げるという仕組みで、現在、3本(Slim米国株式(S&P500)、Slim先進国株式インデックス、Slimバランス(8資産均等型))のファンドが基準に該当して信託報酬率が引き下がっております。多くの投資家の皆さまに保有して頂くことで、さらに低くなっていく仕組みですので、是非投資家の皆さまと共にファンドを大きくしていければと思っております。

――コストはさらに引き下げられますか? また、5月2日に「eMAXIS Slimシリーズの基本理念について」というお知らせを出されていますが、この文章の意図は?

引下げ可能水準についてはお答えできませんが、基本的には当社が考える競合商品の運用コストを見ながら当社ファンドの引下げについて都度検討しております。

5月2日のお知らせについては、Slimシリーズに関しては、業界最低水準の運用コストをめざしていますが、継続性が懸念されるような事態は避けるべきと考えており、そのことを今一度お伝えさせて頂いたものです。しっかりと継続性が担保されないうちは、信託報酬の引下げは行わないものの、運用コストという広い観点含めて今後も継続的に削減努力していく所存です。

――シリーズは既に59本となっています。中には残高が10億円に満たないファンドもありますが、今後、シリーズをどのように育成していく考えですか?

新商品については、時代やニーズに合わせ、必要に応じて投入していきたいと考えています。

一方で、既存商品についてはまだその良さや商品自体を知られていないものも多いと考えているので、より多くの方に知ってもらえて良さに共感して頂けるよう、認知度を高める努力をしていきたいと考えています。投資をこれから始められる方、すでに投資をされている方、ともにご自身のポートフォリオの中心または一部として欲しいファンドが揃えられているシリーズとしていければと考えています。

また、商品ラインナップだけではなく、最近「リアルお財布大公開!」といったコンテンツもリリースしていますが、初めての人がファンド選びに困らないもしくは参考となるコンテンツや、LINEでの情報発信など資産運用を始める・続けていく中で便利と感じてもらえる様々なサービスも合わせて提供してきたいと考えています。その中で、多くの人に長くご利用頂け、おすすめして頂けるようなシリーズに育てていきたいと考えています。

――最後にファンドの受益者、また、ファンドに注目している個人投資家へのメッセージをお願いします。

eMAXISシリーズ合計で6,746億円(6月5日時点)となり、多くの方にご愛顧頂けており感謝申し上げます。足元新型コロナにより、マーケットが大きく変動し不安に感じられた方、時間が出来たことで投資をはじめてみようと思った方等様々いらっしゃると思いますが、このような環境含めて長い資産形成の中で、お客さまの声を聞きながらずっと寄り添い続けられるような商品・サービスを提供し続けていきたいと考えていますので、引き続きのご愛顧、また、投資の一歩目としてご活用頂けますと幸いです。(図版は、eMAXISシリーズ全体の設定来の純資産残高の推移)