目的に応じてリスクコントロール戦略を使い分け、アセットマネジメントOneが下落に備えるセミナー開催

 アセットマネジメントOneは8月21日に、「ダウンサイドリスクコントロール再考~コロナショックからのレッスン~」をテーマにした機関投資家向けのオンラインセミナーを開催した。同社が運用するリスクコントリール型のバランスファンド「投資のソムリエ」は、今年3月のコロナショックの急落を4.75%程度のドローダウン(過去ピークからの下落率)で乗り切り、基準価額は既に年初来高値を更新している。今回のセミナーでは、同ファンドで採用する手法も含めて6つの投資戦略を紹介。同社の運用本部共同本部長の星野元信氏は、「ダウンサイドリスクへの対処は運用者個々によってニーズが異なる。リスクを抑えることでアップサイドを犠牲にし、また、コストも上乗せされる。ポートフォリオの中で、どこまで組み込むべきなのか、ポートフォリオの性格に合わせて検討していただきたい」と語っていた。

セミナーで紹介された6つのダウンサイドリスクコントロール手法は、まず、一般的に広く実施されている「資産の分散」。株式や国債などの債券に分散投資することで、資産間の分散効果によって特定資産の下落の影響を低減することを目指す手法だ。しかし、近年の低金利の影響で、そもそも債券の金利の低下幅は限定的になり、債券保有による下落抑制効果が限定的になっている。今回のコロナショックでは、日本やドイツといった超低金利国の国債は一部でマイナスリターンになるなど、下落抑制効果の限界を露呈した。当面は、低金利状態が継続するため、伝統的な資産への分散投資には限界がある。

次に、「ターゲットボラティリティ」といわれる戦略。市場のボラティリティ(価格変動率)が高まってくると、株式等のリスク資産への投資資金を縮小し、ダウンサイドリスクに備えるもの。リスク量が安定し、リスク/リターンの改善効果が期待できる。ただ、この手法は、リーマンショックの時には有効に機能したが、コロナショックは2週間で大幅に急落するという動きだったため、リスクウエイトの引下げが間に合わず、市場の下落率並みの下落率になってしまった。また、リスク資産を抑えたため、株価がV字型に急反転した折には、市場のリターンに追随することができなかった。

3つ目は、「オルタナティブリスクプレミア」戦略。株式などの伝統資産と低相関にあるファクター(リスクプレミア)への投資を通じた戦略分散によって収益の安定化を目指す手法だ。伝統的な資産分散よりも、より多様に分散投資する手法といえる。たとえば、PER(株価収益率)などが高い割高な銘柄をショート(空売り)し、割安な銘柄をロング(買い持ち)にするロングとショートを活用したマーケットニュートラル戦略などがある。ただ、コロナショックでは株価が急激に下がって上がったため、ショック時の下支え効果も回復期の収益獲得も限定的だった。

4つ目はオプション理論に基づいて設計された運用モデルを使って一定水準の損失フロアを設定する「ポートフォリオ・インシュアランスアランス」戦略。一定水準以下に下落することを防ぐ一方で、上昇時にもある程度を追随することが可能。コロナショックでも下落局面で損失を限定した。ただ、フロア水準を設けるために一定のコストを負担する必要がある。コロナショックにように、下落から数週間で価格がV字回復した場合、コストとの見合いを考慮する必要がある。

そして、5つ目が、「投資のソムリエ」でも使われている「市場環境判定シグナルによるオーバーレイ」戦略。VIX(恐怖指数)やクレジットスプレッドの水準、資産間の相関などのテクニカル指標等を用いてシグナルを生成し、マーケット環境が悪化した時に、株式等リスク資産への投資額を縮小することでダウンサイドを抑制する方法だ。「高リスク資産」と「低リスク」資産に分け、安定・警戒・危機の3段階でシグナルを出し、日次で配分比率を変更するという対応を行うことで、同社のシグナルは、今回のコロナショックでは十分に機能した。ただ、シグナルが有効かどうかは分からない部分があり、市場環境への適応を絶えず行っていく必要がある。

最後に、VIX先物を買い持ちにしてボラティリティの高まりを収益に変える戦略や日中の下落トレンドをショートポジションでその日のうちに獲得することをめざすなどという「ディフェンシブ/テールヘッジ戦略」。これらは株価等が下落する局面でのみ効果を発揮するような戦略であるため、平常時にはフラットなパフォーマンスになる。

いずれの戦略もどのような下落局面でも通用する万能型ではない。このようなリスクコントロール手段を使わずに、ただ単に株式を保有し続けるだけの方が、よほど高いパフォーマンスを残せるということもあるだろう。運用者の考え方によって、リスクコントロール手法の選び方や活用の仕方も異なる。星野氏は、「特定のリスク手法に頼ることなく、複数の手法を導入することが望ましい。運用会社の担当とコミュニケーションの上、最適なヘッジ戦略を構築していただきたい」と伝えていた。(図版は、「投資のソムリエ」と代表的な株価指数の過去1年間のトータルリターン相対比較)