MUFG中核証券としてベストな金融ソリューションを、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のウェルスマネジメント

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券と三菱UFJモルガン・スタンレーPB証券が8月1日に合併した。存続する三菱UFJモルガン・スタンレー証券に旧PB証券の本支店などが所属するウェルスマネジメント本部を新設し、合併新会社として富裕層ビジネスを大幅に強化する。その富裕層ビジネスを統括する三菱UFJモルガン・スタンレー証券副社長の浜田直之氏(写真:左)とモーニングスター代表取締役社長の朝倉智也(写真:右)が対談し、富裕層ビジネスの展望を聞いた。

◆ウェルスマネジメントに特化した専門集団

朝倉 いよいよ本格的にMUFGの富裕層ビジネスが本格的に動き出しました。競合はいろいろありますが、御社の戦略は?

浜田氏 「富裕層ビジネスの強化」はすべての大手証券、金融グループの共通項になっています。ただ、目指すべき姿やアプローチの方法はそれぞれ異なると思います。私たちはMUFGとモルガン・スタンレーのジョイント・ベンチャーという特徴を活かして、ワールドクラスのサービスを提供する本格的なウェルスマネジメント・ハウスを目指します。

「セミハイエンド」として総資産3億円以上、「ハイエンド」として総資産20億円以上のお客さまを主たる対象として、銀行、信託銀行と連携しながらビジネスを展開しています。それぞれのお客さまのニーズにしっかり対応するために、FA(フィナンシャル・アドバイザー)が担当するお客さまの数は150程度に限定し、長期担当制を積極的に取り入れていきます。ちなみに旧PB証券では基本的に担当者は生涯変わらず、お客さまから大きな信頼を得ています。これは国内において大きな特徴だと思います。

また、これまでは欧米の事例は日本では通用しないという議論がありましたが、今や世界の金融市場は同質化してきています。低金利・低成長・高齢化などです。そう考えると、海外の成功事例が日本でもうまく活用できる時代といえます。モルガン・スタンレーは、米国のウェルスマネジメント・ビジネスのトップランナーですから、ビジネスモデルそのものを戦略に取り入れたいと思っていますし、モルガン・スタンレーのケーパビリティ(組織的な能力)を使っていくことも大きな特徴だと言えるでしょう。

朝倉 かつて、欧米で実績のある外資系企業が国内でウェルスマネジメントに挑戦したものの、ことごとく撤退の憂き目を見ました。それは時期尚早だったのでしょうか?

浜田氏 お客さまのニーズにお応えしながら、もっと粘っていれば花開いたかもしれません。たとえば、旧PB証券は8年間連続でユーロマネー誌における、日本のベスト・プライベートバンクとして表彰されています。22年前にメリルリンチの手法をベースにスタートして以降、一貫して米流のビジネスモデルを実践してきて、国内で成功しているのです。

また、時代の流れという点では、低金利、低成長や加速する変化の中で、日本の富裕層の方が抱える悩みが大きくなってきているという側面もあると思います。悩みが多いということはソリューションが多いということですので、時代的な側面からも、これから富裕層ビジネスを強化していくということは時宜を得ていると思います。

朝倉 ウェルスマネジメントは運用、資産継承・相続、税対策などいろいろな側面があります。具体的にどのようなサービスを展開するのでしょう?

浜田氏 私は「ステップゼロ」から「ステップ3」のロードマップを考えています。多くの証券会社は個別商品を提供する「ブローカー」ですが、これを「ステップゼロ」とします。

個別商品に加えて、運用資産全体に対してアドバイスするのが「インベストメント・マネージャー」です。お客さまのゴールを実現するポートフォリオを提供するというのが、インベストメント・マネージャーとしての成功の秘訣です。お客さまが考えているリスクの中で、リターンを最大化させることを提案していく、これが「ステップ1」です。

「ステップ2」は、運用資産の外にある金融資産、たとえば、事業承継、保険、不動産、遺言信託や自社株の活用などに対してソリューションを提供する「ウェルスマネージャー」としての仕事です。

最終的な「ステップ3」は、金融以外のニーズにもサービスを提供していく「ファミリー・ウェルスマネージャー」です。海外のファミリーオフィスのように、ファミリーガバナンスや子女の教育、リタイヤ後の慈善事業などといったことまでアドバイスします。

朝倉 米系の大手金融機関も富裕層に対し、通貨オプションやスワップ、ヘッジファンドなど、とがった運用商品を提供していました。

浜田氏 オプションやオルタナティブなど幅広いソリューションを提供していきます。ただ、運用商品はとても大事ですが、アセットアロケーションによって全体の93%が決まるといわれていますから、より良いポートフォリオを提案することこそがアドバイスの基軸になると思います。

◆MUFGと米No.1モルガン・スタンレーとの協業力

朝倉 運用だけではなく、相続や子女の教育などということになると、どこかと提携するなど、オープンアライアンスのような考えはあるのですか?

浜田氏 ウェルスマネージャーとしての我々の強みは銀行と信託銀行がグループにいることです。不動産や遺言信託などでは、信託銀行の機能が重要になります。また、海外では自社株の活用に、持ち株を担保にしたローンが使われています。そこでは銀行の機能も活用しています。お客さまの金融以外の様々なニーズにお応えするということでは、MUFGグループの強みが活かせると思います。

一方、弊社には国内トップクラスの実績を持つ投資銀行部門があり、IPOやM&Aでは社内連携も図りますが、そこでは比較的大きな企業を対象にしています。もっと小さな企業のM&Aなどへの対応については、日本M&Aセンターと提携しています。グループで欠けているところがあれば、お客さまにベターではなくベストなものを届けようとすると、他社との連携・提携があっても良いと思います。

朝倉 今回PB証券の250人に、証券から350人を併せて600人態勢でスタートしましたが、2年以内に1600人にする計画を聞きました。人材教育や育成は?

浜田氏 これは今、若手中心に資格の取得を進めていて、皆ビックリするほど勉強しています。ウェルスマネージャーは勉強しなければならないという文化ができてきていると思います。また、教育プログラムの中に旧PB証券が培ったノウハウも組み込みました。一方、モルガン・スタンレーに研修に出すと、実際に海外を体験することで会得することもあります。総合証券ですので、ジョブチャレンジで個人営業以外のスキルも経験してもらうこともできます。このような機会は、さらに増やしていきたいと考えています。

朝倉 個人営業員に対する収益目標を撤廃したとお聞きしましたが。

浜田氏 私どもの大きな特徴は、販売目標も収益目標も個人では持たせていないことです。お客さまの満足度とお客さまが設定したゴールに対する到達度、そして、預かり資産で評価します。預かり資産は信用を測るバロメーターですので、預かり資産にはこだわっていきたいと思っています。

一方、経営としては収益を適切に管理していかなければなりません。支店長には経営者として、拠点収支への意識も必要です。見習うべきは、レストランの経営だと思っています。レストランの経営者は収支を管理しビジネスを拡大したいと思っていますが、料理をしている人は、一生懸命良い料理を作ることだけを考えています。それで、お客さまに喜んでいただいて、また、来ていただきたいということに集中しているのだと思います。ホールの人も、目の前に座っているお客さまから収益をいただくことを考えていないと思います。最高のサービスをして、お客さまに料理や雰囲気を堪能していただくことに全力を尽くされています。

私たちの仕事も経営者はビジネスとして収益を追求しますが、FAやFAをサポートする人たちは、お客さまのニーズを聞いて、そこに応えていくことに集中します。お客さまの信頼が高まれば預かり資産は増えると思います。また、お客さまの顕在的、潜在的なニーズにお応えしていくと海外のウェルスのようにフィービジネスの比率が上がってくると思います。預かり資産とストックフィーの比率が上がると、結果として収益に結びついてくることは不可能ではないと思っています。そういうものを根付かせていきたいと思います。

朝倉 コロナの影響で、対面サービスには厳しい船出になりました。

浜田氏 ウィズ・コロナは、お客さまとのコミュニケーションや業務運営を見つめなおす機会になりました。Webコミュニケーションは、この2-3カ月で大きく進展しましたが、さらにデジタルの活用を推し進めていきたいと思います。

アメリカで成功しているFAに聞くと、お客さまに直接お会いする機会は年に2回から4回くらいだという答えが返ってきます。もちろん、その間にも色々な方法でコミュニケーションを取っているのだと思いますが、お客さまのゴールを聞いて、ポートフォリオを組んで提案すると、四半期に1度会えば十分ということかもしれません。

150人を担当したとして、1人あたり年4回面談すると、年間で面談件数は600回になります。1年間52週間だとすると、毎週10件程度レビューをしている計算になります。それ以外の時間は、マネードクターとしてお客さまの現状を診断して処方箋を書くなど、お客さまにお会いするための準備をする時間に使ってほしいと思います。

朝倉 確かに今までは売ったらおしまいで、レビューはほとんどない状況でした。

浜田氏 最初の入り口は大事なのですが、ポートフォリオを組んだ後がさらに大事で、レビューの重要性を再認識する必要があります。また、レビューやポートフォリオを見直す時に忘れてはならないのがテクノロジーの活用です。科学的な分析や可視化によって、お客さまの理解度や納得度が高まります。アドバイスとテクノロジーの融合が必須条件だと考えています。

朝倉 そこには、お客さまへの投資教育も重要ですね。今、若い人たちが運用を始めています。NISAやつみたてNISA、イデコ(個人型確定拠出年金)などの制度があって、長期積立分散投資が広がって、若い人への投資教育ということはよく言われていますが、もっと大きな資産を持っている人への投資教育ということは誰もいいません。

浜田氏 お客さまへの投資教育は、ウェルスマネージャーの重要な役割だと認識しています。特に重要なことは、リスクに関するコーチングだと思っています。米国でも本当の意味でのフィービジネスが伸び始めたのは、2012年か13年頃といわれています。アメリカで行き着いたのは、リスクオリエンテッドの考え方です。リスクが決まれば、それに合わせたリターンが決まり、そのリターンがトータルでのゴールに近づいていなければ資産を増やすということだと思うので、重要なことはリスクを共有化することです。このスタート地点は日本も同じだと思っています。

また、先ほどロードマップでお話しした通り、運用以外の領域においても、様々なサポートツールを活用して、積極的にお客さまの理解を深めるお手伝いをしていきます。

◆富裕層に理想のソリューションを提供

朝倉 当面の経営目標は?

浜田氏 先ほどの話に重複しますが、お客さまの信頼のバロメーターである預かり資産を安定的に拡大すること、フィービジネスを含むストック資産の比率を米国のように50%程度まで引き上げること、そしてファミリーオフィス・ビジネスを本格的にスタートすることを当面の目標としています。

また、証券アナリストやCFP、宅建などの資格所有の促進や、デジタル・ツールの拡充と活用率の向上も経営目標に加えています。もちろん、お客さまの満足度、社員の満足度は特に重要な指標として目標管理していきます。

これまで富裕層に対するサービスが行き届いていなかったのではないかと考えます。国内では富裕層の方々が、大きな課題を持っていらっしゃると思います。それぞれのお客さまの顕在的、潜在的なニーズに沿ったベストなソリューション、サービスを提供することが重要だと思っています。

私たちは、MUFGの中核証券として富裕層ビジネスを展開します。MUFGとの連携、モルガン・スタンレーとの連携を存分に活かして私たちの理想とするサービスモデルを作っていこうとしています。ご期待ください。