コロナがもたらした債券投資の新常識、低金利の長期化に備え選別投資=アセマネOne債券FMの市場見通し

 安定したパフォーマンスが期待でき、かつ、株式に対するリスクヘッジの手段になるとして重宝されてきた債券運用が、ここ数年の世界的な低金利によって従来期待されてきたパフォーマンスが出せなくなってきている。そこに加えて、コロナショックで世界各国が政策金利の引き下げと、大規模な財政出動を実施した。このコロナの影響が、今後の債券市場にどのように響いてくるのか、アセットマネジメントOneの外国債券ファンドマネジャーの竹井章氏が、7月8日に開催した機関投資家向けWebセミナーで解説した。

「失われた20年」といわれる低成長期を抱える日本では、先進国の中でも低金利時代が長く続いている。1999年2月に始まったゼロ金利政策は、2016年2月にはマイナス金利政策になり、長引いた超低金利によって、国内債券でプラスのリターンをあげることは極めて厳しい状況になった。国内投信のカテゴリー別トータルリターンを平均して求めているモーニングスターインデックスの「国内債券型」は、6月末現在のトータルリターン1年でマイナス1.77%だ。

モーニングスターインデックスのトータルリターン1年は、「国際債券型」もマイナス1.74%となり、特に、「国際債券・エマージング・単一国(為替ヘッジなし)」がマイナス5.91%、「同・複数国(為替ヘッジなし)」がマイナス5.72%、「国際債券・ハイイールド債(為替ヘッジなし)」がマイナス9.22%と、厳しい成績になっている。これは、「国内株式型」のプラス4.50%や、「国際株式型」のマイナス1.60%と比較しても劣後している。

竹井氏は、コロナショック前後での債券市場の動きを振り返って、「コロナ以前からある潜在的問題が顕在化した」という。そして、当面の市場見通しとして「長期にわたり低金利が定着し、リスク資産は中期的に選別される」と見通す。現在の局面は、長期の市場環境を振り返ると、「大きな転換点にある」という見方を示した。

また、経済構造の変化として「成長から福祉重視(格差の是正)」、「グローバル化の後退(グローバルサプライチェーンの脆弱性露呈)」、「公的部門(政府・中央銀行)の関与常態化」に着目し、「景気後退、デフレの負のスパイラルによってディレバレッジが本格化する」と見通している。

長期の世界政治・経済体制の変化については、まず、1929年の世界大恐慌に始まった大型財政出動による景気浮揚策を実現する「大きな政府」の時代が、1980年まで約50年間継続したとする。この間、第2次世界大戦があり、東西冷戦時代が続く。そして、80年に始まった新自由主義(市場史上主義)の時代は、米レーガン政権、英サッチャー政権に代表される「小さな政府」の時代として、現在に至る40年間を画している。89年のベルリンの壁崩壊を象徴としてグローバリゼーションが世界を席巻した。

竹井氏は、この「小さな政府」と「グローバリゼーション」の時代がコロナによって大きく転換するのではないかと見立てている。ロックダウンによる休業補償などは「大きな政府」を代表する施策といえ、これは世界各地に広がっている。この補償は、いつまでも続けられるわけはなく、次には「残存企業と退場企業の選別が始まる」と予想され、それを最終的に政府が決定するという図式が読める。また、ロックダウンによって国際的な分業体制も寸断され、まさかの事態に備えて消費地の近くで生産する生産体制への見直しが進んでいる。急速に進んでいたグローバリゼーションが反転するような動きだ。

さらに、債券市場にとっては、コロナ対策で大量発行した各国の国債の行方は大きな影響がある。国債は政府が買い上げることによって発行量を急速に拡大した。そして、ロックダウンへの対応として企業の債務も拡大している。現在、日米欧の物価は低下傾向を鮮明にしつつあり、デフレの予兆がでてきた。官民両面で膨らんだ負債は、今後は景気後退とデフレリスクの下で、債務の取り崩しが課題になってくるだろう。

竹井氏は、このような大きな変化の時代を迎え、「世界経済は大恐慌に匹敵するほどの景気後退を迎え、W字型の回復が想定される。コロナショック前の状態を取り戻すまでには相当な時間が必要になるだろう。テレワークの常態化で生活に影響が出ているように、投資の仕方も変わらざるを得ない」と、従来の投資の常識をリセットする必要があると訴えていた。(図版は、アセットマネジメントOneの代表的な債券ファンドとモーニングスターインデックス・エマージング債券とハイイールド債券の推移。過去3年のパフォーマンスは横ばいから下向きだ)